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愛知県立大学 小栗研究室 様

機器の存在感をなくして環境と融合したVRシステムを実現

小型のプロジェクターを組み込んだ「VR行灯」を製作し
茶室における新しいソリューションを提案する

導入の必須ポイント

茶室に直接の施工を行わずに プロジェクターを設置すること 違和感なく茶会に融け込んだ VRシステムを実現すること 行灯に超単焦点で小さい プロジェクターを組み込むこと

プロジェクターを組み込んだVR行灯

成約の決め手
 他社とは違う提案と困難な課題にも粘り強く対応する現場の力が高く評価された。検討を進める中で出たキーワードを掬い上げ、実現に向けた姿勢も高評価の要因になった。

今回の取材先

愛知県立大学
情報科学部教授
小栗宏次様

導入背景

 2018年10月に東京・根津美術館の茶室で行われた茶会で、当社で製作した「VR行灯」が用いられました。茶室に直接施工することなく、お客様が違和感を持たれないようにVRシステムを茶会で実現するという試みでした。

プロジェクターの設置方法と存在感がボトルネック

 茶会でVRシステムを実現したいというご相談で一番大きな課題となったのが、茶室に違和感なくプロジェクターを設置するということでした。室中にプロジェクターがあると、茶会本来の魅力が大きく損なわれてしまうためです。
会場となる根津美術館の茶室には壁や床に穴を空けることはできません。また天井から吊り下げるのも安全上の観点から難しいため、プロジェクターをお客様から見えてしまう床や台の上に置く必要がありました。床や台の上にあるプロジェクターがいかに茶室の中で違和感を持たれないようにするか、その試行錯誤が行われることになりました。

茶室に設置しても違和感のない「VR行灯」を製作

課題を解決に導いたのは、小栗様とのやり取りの中で出てきた「行灯」というキーワードでした。しかし、行灯にプロジェクターを組み込むには“超単焦点で小さいプロジェクター”が必要なため、条件はかなりシビアなものでした。小栗様も、そして社内からも実現は難しいのではという話が多く出ましたが、茶室で違和感なくVRシステムを実現するには、行灯が最適なのも明白でした。試作のためにプロジェクターを探すと、条件を満たすLG社の「PH450UG」が見つかりました。

VR行灯上部のプロジェクターからプロジェクションマッピングを投影する。
投影された紅葉は人の動きに合わせて舞い散る

このプロジェクターは、高さ85×幅132×奥行200mmという小型でも、今回の夜会を演出した茶会で映像を綺麗に投影できます。また、WiFiと内蔵バッテリーにより、不粋なケーブルを使わずにVRシステムを構築することができます。早速、PH450UGを組み込んだ行灯の設計図を書き、サンプルを製作しました。
小栗様と検討しながら試作を重ね完成したVR行灯は、茶会の席主様を始め、参加されたお客様にも大変ご好評いただきました。
そして今回の事例によって、プロジェクターの活用シーンにおける新しいソリューションをご提案することができました。

ユーザーの声

新しい技術を取り入れ伝統と歴史ある文化を魅せる

きっかけは、今回の席主さんが、2017年にVRシステムで演出した私の茶会を体験されて、ご自身の茶会でも活用したいと相談いただいたことです。ただ、私の場合は実家の茶室でしたので改築してVRシステムを導入することができましたが、根津美術館の茶室は違います。解決策がなければ、ワイヤーでプロジェクターを吊るそうかと思っていました。また、他の人の茶会にVRシステムを持ち込むというのも初めての試みでしたので、不安もありました。
そこで、普段から様々なご提案をいただいたり、ご相談させていただいたりしている電子システムさんに話をしてみました。ワイヤー案については、安全上の観点から反対されましたが、スチール等の台に置くのも茶会には合わない。検討する中で、夜会(夜に行う茶会)には室内に「行灯」があることを思い出しお伝えしましたが、行灯にプロジェクターを組み込むのは難しいと思っていました。
結果的には、電子システムさんのご尽力で完成した「VR行灯」は、プロジェクターと茶室が見事に融和していました。私の方で制作したリアル志向のプロジェクションマッピングと共に、現代のお茶の世界に新たな感動を与えられるVRシステムだと確信しました。実際に、席主さんもお客さんも大変満足された素晴らしい茶会となりました。
「お茶」という歴史ある世界にICTが入ることへの抵抗感や違和感は、工夫次第でいくらでも小さくすることができます。かつて、日本と外国の文化が融合して立礼式という新しいお茶の形が生まれたように、VR行灯も何か新しい形を生み出すかもしれません。電子システムさんには、今後も文化と技術の架け橋として、難題であっても挑戦して欲しいと思います。

愛知県立大学 小栗研究室
生体信号から人の状態を推定・予測するIoTバイオセンシング、解析技術の開発や、路面標示状態マネジメントのための高度道路交通システム、パターン認識、コンピュータビジョンなどを研究している。
http://www.ist.aichi-pu.ac.jp/lab/oguri/

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